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孫泰蔵「冒険の書−AI時代のアンラーニング」

孫泰蔵さんが「なんで学校に行かなきゃならないの?」という素朴な問いから出発して、現代の教育システムや社会、人々の価値観に繋がっている過去の思想がどのような背景から生まれてきたのかを、その過去の思想家との架空の対話を積み重ねながら自分の頭で一つ一つ考えていき、今の時代で必要とされている教育とは何か、学ぶことの意味は何か、そもそも生きる意味とは何か、を突き詰めて考えた力作。

と、まとめてはみたものの、この本を読み終えたいま、手が震えている。身体が熱くなって、駆け出したいような衝動を感じている。自分も心の底から学びたい、より善く生きたいという感情があふれ出てくる。とてつもない情熱が伝わってくる。そして優しい。過去への尊敬の念や他者への愛が文字から飛び出てくるようだ。

孫泰蔵さんが社会や教育に関して考えたことを書き留めた「探究ノート」から始まり、やがてそれを仲間とシェアして学びを深めるためにエッセイとして投稿していたものを、書籍化するために再構築したという。小さな問いからスタートして本から学び、考えて一つひとつ答えを探りながら新たな問いを立てていく。元々共感を覚える内容が多かったので、うんうん、と心の中で頷きながら読んでいくと、どんどん話が大きくなっていく。おいおい、これはどこまで行くんだろう、とちょっと引いた感じで読んでいたはずが、終盤に行くに連れて、文章の熱量に自分の心が沸騰していって、途中で涙が止まらなくなってしまった。ああ、自分もこんなふうに学びたい、生きたいと考えているんだ!

引用したくなる節はたくさんあって、でもそれを引用してもこの本の良さは伝わらない。一言でいえば「アンラーニング」なんだけどこの単語だけではこの本の姿勢やスケール感が伝わらない。読んで欲しい。自分の家族(親兄弟も含めて)、友人、仕事仲間など、関係を問わずとにかくみんなに薦めたい。

とりあえず次に引用する一節は、自分がなぜ知的財産に惹かれるのか、という、最近つとに考えている問いにヒントを与えてくれるものとしてここに残しておく。

小さな「問い」に始まり、「つくる」ことを通じて「わかる」ようになる。同時に「わからない」こともたくさん生まれ、そこからさらなる「問い」が生まれる。それらを繰り返していくうちに、なにか「形になったもの」が生まれる。それがなにかを解決していたら「イノベーション」と呼ばれ、人類のまったく新しい知を開くものであれば「発明」と呼ばれ、人の心を動かすものであれば「芸術」と呼ばれる。そして、すべての創造は「アプリシエーション」により支えられ、さらに素晴らしいものへと高められていきます。

創造へのアプリシエーション。自分の感覚にぴったりマッチしているわけではないけれどもかなり近い。発明、表現、デザイン。いずれも人の知的な営みの成果物であり、その創造性に触れることが自分を熱くする。問いと学びがつながっていく。

カテゴリー: 読書